only one
「私はそのお嬢様の代わりなのですね。」
「そうです。ショックですか?」
「いいえ、もっと最悪なことを考えていたのです。
だから正直ホッとしました。」
「隗夢様に真実は告げておりません。
きっと養女になられるのなら屋敷から遥夢様をお出ししてくれないと思ったからです。」
「そうですか...。私もてっきりお嫁で来るのだと思っていました。」
「申し訳ありません。事情がありましたので...。」
そして仲村さんは申し訳なさそうな顔して腕時計を見た後私を抱き上げて部屋に向かった。
「お嬢様は足が悪くて歩けませんでしたので遥夢様も歩かないでいただきます。
遥夢様の移動は全て私にお任せ下さい。
では、時間がありません。お着替えを...。」
部屋に入ると掛けてあった着物を着付けてくれた。
赤地に大きな白い牡丹の花模様、花の周りは金糸で飾られていてとても斬新な模様の着物だった。
「お嬢様の着物です。全てお嬢様が生前デザインをされたものです。」
綺麗に着付けをしてもらい髪も仲村さんが結い上げてくれた。
男の人なのにすごい。
私も自分で一通り着れるけど手際の良さに驚くしかなかった。
「では、ご主人様がお待ちかねです。お部屋に案内させていただきます。
今からだと朝食の時間となっておりますので食堂に参りましょう。」
抱き上げられ私は仲村さんの腕の中で小さく震えた。
いったいどんな方なんだろう...。
最悪の事態を想定していた私には今の状況に戸惑いが隠せなかった。
仲村さんを信用していないわけじゃない
だけど今から自分の身に何が起こるのかわからないんだ。
覚悟をしていただけに今の私には家を出るときのような強さはなくなっていたんだ。