only one



「入れ。」



太く迫力のある声。



中にいるご主人様の声だとすぐわかった。


威厳があり重々しい声。



今から私と対面し一緒に食事を取るこの家の主。



俯いていた顔を上げて仲村さんを見上げた。


きっと瞳はゆらゆらと不安に揺れていたのだろう。


そんな私を見て仲村さんは優しい微笑みを浮かべたまま話したんだ。



「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。」



たった一言、そう言った仲村さんの言葉は魔法の言葉のように私を安心させてくれる。



自分が置かれている状況が全くわからない私には仲村さんの言葉だけが真実であり救いなんだ。



扉は開かれた。


中にいる使用人によってだろうか目の前の重厚な扉は音もなくゆっくりと開いたんだ。




そして目の前に広がるのは食堂と呼ぶには広すぎる部屋。



純和風の屋敷には似つかわしくない洋風のパーティー会場のような部屋だった。






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