only one


「ごめんなさい...。」



謝るしかなかった。


焦っても焦っているからこそ何も話せないつまらない私を...


溜息をつかせてしまった情けない私は謝る事しか出来なかったんだ。



「どうして謝るんだい?」


そう言って目を細める旦那様。



私は俯いたまま小さな声で今の正直な気持ちを伝えた。


「楽しい話し相手にならなきゃいけないと思っています。
でも..だけど緊張しすぎて何も話せなくて...
旦那様に溜息なんてつかせてしまって...
ごめんなさい。」



話している間にどんどん悲しくなって涙を浮かべてしまった。



謝りながら泣くなんて一番ズルイ行為。



解っているのに溢れる涙を止めることは出来なくて頬をつたって落ちていった。




「遥夢、悪いのは私だ。
いきなり連れてこられてビックリしただろう?
溜息をついたのは遥夢のせいじゃない。
遥夢に気の利いた言葉の一つもかけてやれない自分が情けなくて出てしまったんだ。
遥夢が緊張するように私も十分遥夢の前では普段の自分ではいることが出来ていないんだよ。」



私の涙をハンカチで押さえながら一生懸命話をしてくれる旦那様。



なんて暖かいんだろう。


旦那様に頭を撫ぜてもらってその掌のぬくもりに忘れかけていた両親の暖かさを思い出したんだ。









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