only one
仲村さんが準備してくれたお茶はとても美味しかった。
暖かいカップに注がれた琥珀色の紅茶。
湯気が暖かさを象徴しているようにあがっている。
「遥夢さま、落ち着かれましたか?」
優しく問いかけてくれる仲村さん。
私の向かいの席に座る旦那様も優しい微笑を浮かべて私に視線を向けていた。
私は手に持っていたカップをソッとテーブルにおいてから話した。
「大丈夫です。本当にごめんなさい。」
言った後俯いたまま目を伏せた。
「窮屈な生活になると思う。遥夢に自由を与えることは出来ないんだ。
屋敷の中から出てはいけない。危ないからな。」
旦那様はそう言って気まずそうにカップに口を付けた。
「旦那様それじゃ遥夢様にはちゃんと伝わりませんよ。」
仲村さんの声に旦那様はコホンと一つ咳をしてから口を開いた。
「後のことは仲村が話してやれ。私は庭にいる。」
そして旦那様は立ち上がり部屋を出て行った。
私は何も言えないままただ黙って旦那様の背中を見送ったんだ。