only one
目が覚めたのは深夜。
重い瞼を持ち上げると機械の前に座るマツの背中が瞳に映った。
ぼんやりとした視界を目を凝らすとふいにマツが振り返った。
「ひでぇ顔だな。」
「部屋から出てって!」
「ここは俺の部屋だ。」
「なら、私が出てくわ」
ベットから起きあがろうとしても体の力が入らない。
「動けねぇよ。」
体が鉛のように重い。
一体何が起こったの?
「今、薬でお前の体を動けなくした。
お前の居場所はそのベットの上だけだ。」
「そんな事をしなくても、もう私はあなた方に抗おうなんて思ってないわ。」
無駄なことをさせてしまったわねって冷たく言葉を吐き出す。
「それは、いい心掛けだ。
なら、俺に逆らうのはもうやめるんだな。」
言われなくても…。
ベッドの上から私は動かないつもりだった。
マットレスの下のロムを守るにはベッドを動くわけにはいかない。
チャンスはきっとくる。
作ってみせる。
だから、私はまた人形のように従順に生きると誓ったんだ。
その時が来るまでどんな事にも耐えると誓ったんだ。