only one
俺の言葉にククッと喉の奥で笑う彰人。
「旦那様の慰めに猫を飼う。」
「はぁ?意味わかんねぇ。」
「遥夢はどうしてる?」
「もうスッカリ爪を切られたおとなしい飼い猫になっちまった。」
遥夢はまるで人形のように感情を失って生きている。
「あぁ、お袋から連絡がきてるが酷いな。」
彰人は眉を寄せて顔を歪める。
「つぅか…
見てられねぇよ、実際。」
どんどん正気を失っていく人間を見ているのは辛いものだ。
「悪かった。お前に嫌な役回りをさせて…。」
「そうでもねぇよ。
それよりお前はもう大丈夫なのか?」
冷静な彰人、その彰人も春香の死を受け止めることが難しかったようだ。
春香の死後、抗争の激化を願う彰人と抗争に終止符を打ちたい旦那様の対立は凄まじかった。
「あぁ…。」