only one


公園で逢ってから俺は遥夢の姿を見ていない。


以前はふらりと温室に現れていた遥夢。


俺はその姿を温室の中で潜んで見守っていた。


荒れ果てた温室のガーデンセットにぼんやりと座っている姿でも、遥夢がまだ温室に現れることに胸を撫で下ろしていたんだ。


だけど、遥夢は屋敷を抜け出してから温室にぴたりとその姿を見せなくなった。


「遥夢は春香としてここで生活してもらう。」


「あ゛?どういうことだよ!」


「そのままの意味だ。」

「春香の代わりを遥夢にさせるっていうのか?」

「そうだ。」


「てめぇ本気で言ってるのか?!」


「もう先方、遥夢の兄には話を通してある。」


「あ゛?」


「遥夢は旦那様の後妻にもらうと金も用意した。」




旦那様の後妻?

金?



「そうか、なら俺はもうお役ごめんだな。
今日限りでここは辞めさせてもらう。」


ふつふつと沸き上がる怒りを押さえ込んで俺は彰人に言葉を掛けた。





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