only one
息苦しさからか遥夢の吐息が漏れているのもかまわずに何度も角度を変えながらキスをした。
柔らかい遥夢の唇。
ぐったりとした遥夢を支えながら啄むようにキスを繰り返し、
「悪い…」
止められなかった事を遥夢に謝った。
焦点のあっていない遥夢をベッドに寝かせて、先に進みたいという衝動を抑えるために部屋を出ようとする俺に遥夢は服の裾を掴んで俺を引き止めた。
「行かないで…。」
「すぐに戻るから…。」
「一人にしないで…。」
瞳を潤ませる遥夢。
そんな遥夢を放っておくことなど出来るはずもなく、俺はベッドの端に腰掛けて遥夢の頭を撫でてやった。
「慣れてなくてごめんなさい。」
「あ゛?」
「息が出来なくて…。」
「あ…あぁ…」
「嫌いにならないで。」
なんて応えればいいのかわからなくて戸惑いながら曖昧な返事しか返せない俺に遥夢は想いをぶつけるように言葉を吐きながら俺に縋りついた。
背中に感じる遥夢の熱。
嫌いになるなんてことはない。
想いを抑えるのに必死な俺が、嫌うなんてことはない。
お腹に回された遥夢の震える腕、心の中ではスラスラと出てくる言葉が何故か口からは出てこない。
遥夢を不安にさせているのにその不安を取り除く言葉も出てこなかった。