only one
言葉に出来なければ態度で示すしかない。
俺は遥夢の腕をといて向き合い、正面から遥夢を抱きしめた。
ギュッと腕に力を入れて力強く抱きしめたんだ。
嫌いになんかならない。
むしろ、俺の素性を知ったら遥夢が俺から離れるのではないかと不安なのは俺の方だ。
幾分か落ち着いた遥夢を腕から解放し、
「遥夢を俺が嫌いになることはない。
だけど、遥夢は俺を知れば俺から離れたくなるかもしれない。」
不安に想う気持ちをぶつけてしまった。
遥夢を守りたいと思うのに自分の弱さに吐き気がする。
そんな俺の感情の揺れを感じたのか顔を上げた遥夢は俺を正面から見つめていた。
「マツの事を教えて?」
聖母のような微笑みを浮かべながら言葉を落とす遥夢。
俺は、怖じ気づく気持ちを抑えながら自分の事を全て話した。
「運命の人を探しに来たの?」
俺の話を聞いて疑問を口にする遥夢に俺は戸惑った。
そうじゃない。
俺は逃げただけ…
後継者問題から逃げたかっただけ…
「遥夢が俺の運命の人になってくれるか?」
だけど卑怯な俺は、異世界から来たことだけを遥夢に告げて後継者のことは話さなかった。
遥夢と心が通じると俺は髪や瞳の色をを変えてしまう。
その事だけを遥夢に告げたんだ。
「マツの運命の人が私でいいの?」
不安に揺れる遥夢の瞳。
俺はギュッと抱きしめて遥夢に言った。
「遥夢しかいらない。」