only one


竜一の懐に飛び込まなければ彰人を救うことは出来ない。


遥夢を守るだけなら竜一を利用しなくても攫って逃げればいい。


だが、そうすると旦那様の無念を晴らすことも彰人やこの屋敷で旦那様の為に生きてきた数多くの組の人間を救うことは出来ないんだ。


「仕方がないんだ…」


「なんだ?何か言ったか?」


温室の扉の前で小さく呟く俺。


心の中の声を口にしていた。



「いや…何もいってねぇよ。」



ズキズキと痛む胸の痛みから逃げるように明るく声を出して竜一に応えた。



温室の奥にある俺の部屋。


そこに遥夢が閉じ込められている。


竜一と一緒にいる俺を見て遥夢は俺を軽蔑するだろう。


それでも俺の決心は変わらない。


一時的に遥夢を傷つけても竜一を見張っていなければ…。


遥夢に誰も触れられないように見張っていたい。

お前を誰にも渡したくない。


誰もお前に触れて欲しくない。


たとえ軽蔑した視線であろうとお前の瞳に映っていたい。







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