only one
それから数日、秋山が俺を完璧に信用したという手応えを感じた頃、俺は温室に足を踏み入れた。
俺を見て驚愕する遥夢。
俺の名を呼ぶ遥夢を抱き締めたいと心が震える。
心を許さない遥夢を殴りつける竜一の行動に奥歯を強く噛んでこらえた。
今、遥夢を庇うことは全ての計画を崩してしまう。
竜一は俺を試しているんだろ?
「この女は俺とは何のかかわりもない。俺はお前に雇われてここにいたスパイなんだからな。」
遥夢を傷つける容赦のない言葉を口にした。
俺が竜一と繋がっていたと言えば遥夢は俺を憎むだろう。
一度は心を通じ合わせることが出来た俺と遥夢の繋がりを全て否定するために言ったんだ。
「嘘...嘘でしょう?マツ....。」
俺に縋りつく遥夢。
体を支えるだけが精一杯の今にもその体制を崩しそうな遥夢を一瞥して機械に向かう。
操作するうちに機械が誰かに触られているのがわかった。
竜一達には機械に触らないようにと指示していた為、操作したのは遥夢であることは想像がついた。
機械に向かう俺の背中に刺さる視線。
それが遥夢のものだと思うと胸がズキズキと痛んだ。
「相当ショックだったようだな。」
「お前には関係ない。」
「俺達は夫婦なんだぞ。」
「書類上だけ、私はお前の妻になった覚えなどない。」
「それならば、無理やりにでもお前を俺の妻にしてやろうか?」
背中から聞こえる二人の会話に体が震えた。
ギシリとベッドのスプリングが軋む音が響いた。
「好きにすればいい…。」
諦めたような遥夢の言葉に俺はギュッと拳を握った。