only one
竜一は手下の男に支えられながら部屋を出た。
奴らが俺に背中を向けたのを薄目を開けて確認してから俺は閉じていた瞼を開いた。
両脇を抱えられるようにして進む竜一。
足も動かなくなったのか?
引きずられながら出て行く奴の背中を見て俺は笑いを堪えるのに必死だった。
「本当に死なねぇんだな。」
手にしていた俺の頭をソファーの上に丁寧に置いて口を開く橋本さん。
「死んでたら、刑事が殺人犯だな。」
俺も軽い口調で言葉を返した。
「お前が今からアホ坊ちゃま達を皆殺しにするんだろ?」
「首落とされたのに?」
「繋げられんだろうが!」
彰人のお喋りに腹が立つ!
「俺が殺人犯かよ。」
「そうだ。化けもんのマツが優しかった旦那様の敵を打つ。
彰人のシナリオにしてはなかなかいいストーリーだろ?
けど、俺らはお前を捕まえられねぇ。
お前は運命の女と姿を消すんだからな。
それに、お前の事を調べてもこの世界に存在しねぇんだから俺がいくら優秀な刑事だとしてもお手上げなんだよ。」
なるほど、たいしたシナリオだ。