only one
「本当に殺していいんだな。」
「男に二言はない。」
「アンタもたいした刑事さんだよ。」
「俺も、ここの爺さんやお嬢ちゃんには昔世話になったんだ。」
「旦那様に?」
「あぁ、俺が駈け出しの頃無謀な捜査で命を落としかけたことがあったんだ。
それを爺さんに救われた。」
「春香さんは?」
「嬢ちゃんは不本意ながら命を救われた礼に家を訪ねたとき、取り次いでもらえねぇ俺を爺さんに逢わせてくれた。」
「どうせ座り込みでもしたんだろ?」
俺の言葉に苦い表情を浮かべる橋本さん。
「図星かよ…。」
「刑事を敷地内に心良く迎えるなんざ珍しいこった。
ここが組の看板背負っててもやましいことなんかないって俺にもわかる。爺さんの人柄と嬢ちゃんの人柄を見ても、刑事の俺より心が澄んでいるって感じたんだよ。
だからな、お前には損な役回りをさせて悪いが、爺さんと嬢ちゃんの無念を晴らす為に一肌脱いで欲しいんだよ。」