only one


俺は遥夢がいればそれでいい。


「後はうまくやってくれ。」


俺の言葉を聞いて橋本さんはニヤリと笑った。


本当は彰人に逢いたかった。


けど逢えそうにねぇな…。



「彰人がここを引き継いだ後の話をしてやろうか?」


俺の心を悟ったのか橋本さんは俺の返事も聞かずに話し出した。


「この建物はそのままに庭を取り壊してしまうらしい。」


「温室もか?」


「いや、温室はそのままだ。」


「庭を潰して何を作るんだ?」


「広場だとよ。」


「広場?」


「あぁ、なんでもこの近くの養護施設が閉鎖されることになった。
そこの施設の子供をここで引き取るとか言ってたな。」


「そうか…。」


春香さんはボランティアで施設に出掛けていたと聞いたことがある。


旦那様も行政に見放された施設の援助をしていた。


「彰人がボランティアなんて似合わねぇな。」


「だな。」


俺の茶化した言葉に同意をする橋本さん。


けど本当は橋本さんも俺も彰人らしいと思っている。


「子供に怖がられないように気をつけろって言っておいてくれ。」


逢えないのは残念だけど、彰人にも進む道があるんだな。


放れても俺は彰人を忘れない。


絶対だ!







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