only one


親父に逢う。


合わす顔なんて持ってねぇ。


けど、逢わなければ遥夢のそばにいてやれない。


頭の中でぐるぐると回る負の感情。


親父が、後継者が絡むと俺は俺でなくなる。


「マツはいつまで逃げるつもりですの?」


この国はあなたの即位をのぞんでおりますのにとデリーは寂しそうに言葉を掛けてくる。


俺の即位を誰が望むって?


弟がいんだろうが!


出来のいい弟が後継者に相応しいと誰もが思っているはずだ。


現に俺は俺自身の手で後継者には相応しくないというレッテルを貼ったんだからな。


酒と女に明け暮れたどうしようもない生活で俺は逃げたんだ。


「今更後継者だなんてどのツラ下げて言えっつぅんだ…。」


遥夢…。


遥夢


遥夢。



俺の望みはお前だけなんだ。







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