only one


病院を一歩出たら、迎えの車が玄関にデンッと偉そうに横付けしてあった。


「まさか…な?」


嫌な予感がする。


「そのまさかですわ。」

「え゛?マジかよ…。」

落胆する俺の目の前で開いたドア。


「お久しぶりですね、マツ様。
かれこれ…あなたが私を欺いて異世界に行ってしまわれたぶりです。」


嫌味をタップリ含んだ挨拶をくれたのは言わずもなが、デュラン。


爽やかな笑顔が、


「コナ臭い…。」



「何か?」


「なんでもねぇ。」


思わず口にしてしまった呟きをかき消すように話す俺に、


「コナ臭いっておっしゃったのですわ。」


デリーがトドメをさしてくれた。


「コナ臭い…ですか…。」


怖ぇ――!


「冗談だよ!冗談に決まってんだろ!
なっ?デリーもなんとか言ってくれ!」


焦る俺はデリーに助けを求めた。


のに、


「今のはマツの心の声がついポロリと零れたのですわ。」


冗談なんかじゃありませんわって更に追い討ちを掛けられた。


その言葉にデュランはギロリと俺を睨みつけ、小さくなる俺に、


「わざわざ口にしなくても頭の中は既に垂れ流しですのに。」


ぐさぐさとどこまでも刺し続けるデリー。


なら、わざわざお前も口にするなと心の中で悪態をつく俺につんざくような豪快な笑い声が浴びせられた。






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