only one
「伝説の騎士になってもおかわりないようですな。」
肩を震わせながら話すデュラン。
つぅか、その騎士とやらになったからか怪我をしたからか原因はわからねぇけど思考が垂れ流しになってんだろうが!
頭の中を覗かれるのは気分のいいものじゃない。
「確かに…。」
「なら、見るな!」
「デリーも言っていたでしょう?
見たくなくても垂れ流しなんです。」
もう、嘘はつけませんねと続く言葉に俺は反論出来なかった。
「マイ様がお待ちです。」
急に改まるデュラン。
「あぁ。」
俺は短く返事をして車に乗った。
「母さんは元気なのか?」
親父は殺しても死なねぇ。
けど、母さんは?
俺が勝手なことばかりして、挙げ句に姿を消したんだ。
体の弱い母さんの心労を増やしたことはずっと悔やんでいた。
「はい。とてもお元気に寝込んでおられます。」
「あ゛?」
「マーフィー様が戻られたと知った奥方様は嬉しさのあまりお倒れになりました。」
「マツでいい…。」
思い出したようにマーフィー様だなんて呼ばれても自分の名前じゃないように感じてしまう。
「異世界では俺はただのマツだった。
愛称だけで生活していたんだ。」
懐かしい彰人。
マツと名乗るだけで十分だった。
「それでは、マツ様と呼ばせて頂きます。」