only one
「母さんは喜んで倒れたのか?」
「はい。
あなた様がお戻りになったと知らせを受けて、興奮した奥様はマツ様の好きな料理を作り続けて…そのまま…。」
倒れたんだな…
母さんらしい。
「変わらねぇな、母さんも…。」
「はい。
いくつになっても無邪気な少女のようなお方です。」
その表現は母さんを表すのにピッタリで、
「その通りだな。」
デュランと顔を見合わせて笑った。
「マイ様もずっとお帰りをお待ちしていました。」
「伝説の騎士を?」
嫌味を言う俺にデュランは悲しそうに、
「あなた様自身をです。」
キッパリとした口調で言葉を返した。
俺自身?
俺自身ってなんだ?
伝説の騎士の俺。
出来損ないの後継者の俺。
弟に跡を継がすために邪魔者な俺。
「それも全部あなた様です。」