only one
騎士伝説と新しい自分
親父につかみかかる俺を押さえたのはデュラン。
「どういうことだ!
ちゃんと話せよ!
説明しろ!」
デュランに羽交い締めにされながらなお、親父に詰め寄ろうと暴れる俺に親父は静かに言葉を落とした。
「騎士伝説というものがあってな。
最近の研究でわかったのだ。
騎士は国の長になってはいけない。」
「あ゛?」
「しかしそれは表向きの話。
お前の望みが叶ったんだよ。
弟のマーフィーを長として即位させる。
が、事実上の後継者として国の最高権力はマツ、お前が継がねばならない。」
「そんなこと…。」
「それが条件だ。
そうでなければお前の記憶を抜くことは出来ない。」
「マーフィーは…
マーフィーにはこのこと話したのか?」
「話した。
マーフィーは快く承諾してくれた。
お前となら良い国を作っていけると言ってな。」
「けど、マーフィーの…。」
母親が許すわけない。
俺の即位を嫌悪し、また母さんがツラい立場に立たされるのは我慢できない。
俺が途中で言葉を濁しても言いたいことはわかるのだろう。
「彼女は亡くなったよ。」
「え?」
「お前が姿を消して浮かれすぎてたんだろう。
酒を飲みすぎて、泥酔し、階段から落ちて死んだんだ。
不幸な事故だった。
だが、自業自得だ。」
そして、そうさせたのは私だと親父は自嘲しながら話してくれた。
「マーフィーの母親が死んだ?」
「あぁ。」
「マーフィーは元気なのか?」
「今はお前の母親と一緒に暮らしている。
血は繋がっていなくとも本当の親子のように仲睦まじく暮らしているよ。お前がいなくなった寂しさをマーフィーが癒してくれたんだ。
マーフィーも同じ様に母親を失い寂しい思いを母さんが癒やした。
助け合って生きてきたのだよ。」