only one


俺がいない間に色々あったんだな。


マーフィーから母親を奪ったのは俺だ。


喜々として狂うほどに酒を飲ませたのは俺。


ずっと中途半端にしか抵抗できず逃げていた俺が…。


「俺が殺したようなものだ。」



「そう言うと思ってな、今日はここに呼んであるんだ。」


温室のガラス越しに見える人物。


「マーフィー、母さん…」


「早く逢わせろとうるさくつつかれていてな。
今日は逃がしてもらえたなかったんだ。」


いつものようにコッソリ城を脱げ出そうとして見つかってしまったと茶目っ気タップリに話す親父。


「嘘が下手だな。
さっき連れてきたって言ってただろ?」


俺の言葉に口笛を吹いて誤魔化そうとする親父の行動がベタすぎて、けど不覚にも泣きそうになった。


「マツ!」


「兄様!」


温室の扉から飛び込んできた二人の姿がぼやけて見えたのは俺だけの秘密だ。





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