only one
「母さん、体はもういいのか?」
真っ先に気になったのは母の体。
けど母さんは相変わらずで、
「せっかくあなたの為にと思ってたくさん作ったご馳走を食べてもらえないって知って、マーフィーと二人でモリモリ食べたらスッカリ元気になっちゃって。」
ちょっと太ったのよって屈託ない少女のような笑顔で話してくれる。
「残念だったね。兄様!とっても美味しかったよ。」
マーフィーも満面の笑顔で俺に話してくれる。
二人を見ていると親父の言葉が決して大袈裟なものではないとわかった。
本当に仲の良い本物の親子だ。
「マーフィー、あなた少し痩せたんじゃないの?」
「そうだよ!兄様?
首切られたんだろ?
よく生きてられたね。」
まるで化け物だよって軽口を叩くマーフィー。
「俺が化け物ならお前も同じだろ?」
「そうだね。この世界では力の強い者は滅多なことじゃ死なないからね。兄様……………。
母様の事は気にしないで…。
あの人は力を失ってたんだ。
黒い感情に支配されたら力はなくなるんだ。
それもこの国の掟。
母様は闇に自ら入ったんだ。
兄様のせいじゃない。
母様がそれを選んだんだ。」
「マーフィー……。」
なんて応えていいのかわからない。
黒い感情を抱かせた原因は俺だから…。
俺がいたからマーフィーの母親は狂ったんだろ?
負の感情が俺を襲う。
「兄様…
僕は幸せなんだ。
母様は死んでしまったけど、最後まで僕を想ってくれていたんだ。やり方はまちがっていたけどね。」
でも母様のあれが愛情だったんだよって話すマーフィー。
大人になったなと実感した。
そしてマーフィーの言葉と笑顔は俺の負の感情を溶かしてくれる。
「あぁ、そうだな。」
俺もマーフィーに言葉を返した。
笑顔も一緒に…。