only one


親父に詰め寄る俺を見てクスクスと笑う母さん。

「ぜってぇ結ばれる。
決定事項って言い切った割には焦ってますよ?
ね?マーフィー、あなたの兄様は…。」


からかうような母さんの言葉にみんな声を立てて笑った。


確かに焦りもある。


だけど、違うんだよ。


自信がねぇとかじゃない。


みんなが遥夢を知っているのになんで俺は出遅れてんだ?


「可愛い遥夢を俺だけが知らねぇなんて許せねぇ!!」


ピンクのワンピースだと?


毎日ピンクの服着てるだと?


俺の知らない遥夢。


「早く俺にも遥夢を見せろ!!」


喚く俺に母さんが楽しそうに話し始めた。


「独占欲のかたまりね。
きっと遥夢さん苦労するわ。
だけど、そんなに想われるなんて女にとっては最高の幸せよ。
あなたと遥夢さんが二人一緒に城に帰ってくる日を待っています。
頑張るのよ!マツ。」


母さん応援してるからね。


また、かわかわれるのかと思った母さんの言葉は真面目なもので、


「ありがとう。」


俺も素直に言葉を返した。







「次は遥夢さんも一緒に逢えるわね。」


「兄様、頑張ってね。」

「お帰りをお待ちしています。」


「マツ、何があってもお前は私の息子だ。」



順に母さん、マーフィー、デュラン、親父の声を聞いて、俺は記憶を失った。







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