only one


何か思い出しそうで、けど霞がかかったようにハッキリとしない頭にイライラする。


遥夢の笑顔がデリーに向けられても腹が立たないのに、それがディアスだと何故かイラつく自分に戸惑いを感じる。


この感情を俺はいつも持て余す。


どうしたらいいのかわからないんだ。


デリーと二人なら何も感じることなく過ごせる平穏な時間と空間が、遥夢とディアスがいると心がザワザワと騒ぐんだ。


俺はおかしいのか?


頭がどうかしたのか?


グシャグシャと頭を掻きむしり、そのまま瞼を閉じた。


感情の高ぶりをどうやって押さえるのかわからない。


体の中から熱が沸き上がるかのような感覚が恐ろしい。


無くした記憶の中、この体の変調は心が覚えている。


それは恐怖。


フツフツと沸き上がる得体のしれない力への恐怖。


俺は昔、この恐怖と戦っていた気がする。


それが真実か俺の思い過ごしかはわからないが、力を大きくしてはいけないと誰かが言うんだ。







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