only one


「マツ、具合はどうですの?」


トレーをベッドの横の小さなテーブルに置いたデリー。


俺はいつの間にか眠っていたのか?


「悪ィ、寝てた。」


「いいんですのよ。
疲れてましたのね。」


やけに優しいデリーに戸惑いを感じた。


「なんか企んでねぇか?」


だから思った事をそのまま口にした。


デリーが優しいなんて、なんか裏がありそうだ。

「失礼ですわ。
心配しましたのよ?!」

唇を尖らせて話すデリー。


「違う!」


「なにがですの?」


俺の声に驚くデリー。


違うんだ。


「拗ねる時は唇を尖らせるんじゃなくて、頬をぷくっと…。」


膨らませる?


あー…。


頭痛ぇ…。



「悪ィ、寝るわ。」


「えぇ、今日はピクニックは中止にしましたの。またマツの体調のいい日に行きましょう。」


俺の返事を待たずに部屋から出て行くデリー。


俺はデリーの背中を見つめてから瞼を閉じた。






< 389 / 473 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop