only one
頬に触れる遥夢の柔らかい髪。
腕の中で小さく震える体。
そして、なにより遥夢から漂う甘い香り。
全部が俺の心を満たしてくれる。
記憶を無くした俺の心にポッカリと空いた穴を埋めてくれる。
「遥夢、好きだと思うっていうの訂正しろ。」
俺の言葉に遥夢は顔を強ばらせた。
「思うってのは気にいらねぇ…。」
「思っちゃダメなの?
マツさんを好きって思っちゃいけないの?」
「好きだと思うの思うが気にいらねぇっつってんだけど?」
「?」
俺の言葉の意味を理解できない遥夢は首を傾げた。
「俺は遥夢を好きだ。」
俺の言葉に遥夢は頬を赤く染める。
「俺は遥夢の事を好きだと思う。」
途端に曇る遥夢の表情。眉がハの字に下がって、なんとも情けない表情をしている。
けれどハッとしたように表情を変えて、俺の両頬に手を添え、俺の目を見つめながら口を開いた。
「マツさんが好き。
……………好きなの!」