only one


空が白んで月の光が弱まっている。


俺達は木の下で夜を明かした。


「朝が来ちゃったね。」

「あぁ。」


白々と明けていく夜。


視界が明るくなって遥夢の姿が鮮明に瞳に映った。


目を見開いて俺をジッと見つめる遥夢。


俺も遥夢の姿に驚いて声が出なかった。





「やっとですわ。」


「あぁ、世話のかかる奴らだ。」


「ほーんと、手のかかる人達ですわ。」


「けど、これでお役御免だな。」



コソコソとこちらの様子を伺い見るディアスとデリー。


隠れているつもりだろうが声が筒抜けだ。


「ディ……ふ…ん…」


声を出そうとする遥夢の唇に自分の唇を押し当てて塞いだ俺。




「マツの奴、盛ってんな。」


「ガキじゃあるまいしですわ。」



唇を放した俺に何か言いたそうに見つめる遥夢の耳元で声を出すなと囁いて、俺は遥夢を腕に閉じ込めた。


「ディアスとデリーの言葉聞いたか?」


遥夢と抱き合ったまま小さな声で話し掛ける。


「はい。」


「おかしいと思わねぇ?」


「?」


「何か知ってるような口振りじゃなかったか?」

腕の中で遥夢が小さく頷いた。



遥夢の変化した姿を見ても二人は驚いた様子を見せない。


それっておかしいよな?

「遥夢の瞳も髪も色が変わって黒くなってる。
俺は?
何か変わったか?」


俺を見て遥夢は驚いていた。


俺も何か変わったのか?

「マツさんも、黒くなってます。」


「遥夢と同じ?」


コクリと頷く遥夢。



二人が同じ時、同じ変化を起こすって…







「どういうことだ?」





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