only one
ベッドで眠る遥夢。
頬についた涙の後が痛々しくて胸がチクリと痛んだ。
「遥夢は異世界からきた人間だ。
この世界の俺たちのようにはいかないみたいだな。」
心配そうに遥夢を見るディアス。
「けど、心は俺を求めてる。
それだけでも十分だ。」
何度も俺を呼んだ遥夢。
遥夢の心は俺を求めている。
記憶がなくても心の奥底に俺との繋がりを持っている。
十分だ。
この繋がりがある限り俺達は一緒に生きていける。
「だけどな、遥夢。
俺達が歩いた道を忘れるのはもったいねぇだろ?お前が歯を食いしばって生きてきた道を忘れるのはもったいねぇだろ?
だから思い出せ。
記憶の塊を取り戻せ。」
遥夢の額にかかる髪をそっとはらって唇を押し付ける。
泣きはらして熱を持った瞼にも口づけた。
「見てらんねぇ。
これでダメなら温室に移動しろ。
お前らの記憶通りに再現して作ってもらったんだからな。」
「あぁ、言われなくても今から移動する。」
「あ゛?」
「膳は急げだ。」
俺は眠ったままの遥夢を抱いて温室に移動した。