only one


遥夢の肩を引き寄せ顎に指で触れてクイと持ち上げ顔を近付けた俺。


「盛るなよ!」


言葉と同時に脳天にチョツプを入れられうずくまった。


「ディアス、てめぇ…」

頭を押さえてうずくまる俺にフフンと鼻を鳴らすディアス。


許せねぇ。


「てめぇ、なんの恨みがあんだよ!」


椅子から立ち上がるとディアスは俺に舌を出して走り出した。


「上等じゃねぇか!
待ちやがれディアス!」

温室を出ていくディアスの背中を追い掛けた。


「相変わらずですわ。
二人とも…。」


優雅な仕草でお茶を口に運びデリーさんは呟いた。


ビックリして呆気に取られた私にニッコリと微笑んでくれる。


「いつもの事ですわ。」

だから大丈夫ですのよって椅子から立ち上がろうとしてデリーさんに止められた私はおずおずと椅子に座り直した。


デリーさんと温室に取り残された私はちょっぴり気まずさを感じて、何か話さなきゃって思うのに話題が見つからない。


「緊張していますの?」

「え?」


「記憶が戻ってからの遥夢はどこか余所余所しくてわたくし少し寂しく感じてしまいますの。」


節目がちに話すデリーさん。


緊張していないというのは嘘になる。


マツの側から離れたらやっぱり少し怖い。


だって私はここではひとりぼっちなんだもん。


ここは私の住む世界とは違う異世界なんでしょう?








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