only one


いつの間にか私の頬は涙で濡れていた。


「難しいことではありませんの。
少しだけ二人の距離を開けて頂かなければマツは本当の騎士にはなれませんの。
あなたにはこの国の歴史やしきたりを覚えていただくだけです。
それと、歌を…。」


マツが本物の騎士になるために離れる。


本物の騎士…。


心が揺さぶられる。


ずっと力を閉じ込めて生きてきたマツ。


ずっと影になろうとしていたマツ。


本物というのはきっとマツがずっと望んでいたもの。


ディアスさんと暮らした家で見た悪夢を思い出すと、胸が今でもズキズキと痛むんだ。


マツにしか出来ないマツの歩むべき道が見つかって応援出来ない私じゃない。


「わかって下さいますの?」


「はい。マツにはマツの道があるんですよね。
その道はマツの為の、マツだけの為の道なんですよね?」


「そうですわ。」


「応援します!」










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