only one
そのまま無駄だとわかっていも掌から力を放った。
爆音を響かせて壁にぶつかる光。
もうもうと上がった煙がはれても目に映るのは傷一つついていない壁だった。
遥夢…。
遥夢、今どうしてる?
精神を集中させて遥夢の様子を収集する。
頭の中に流れ込んでくる映像と音声。
訓練場として作られたこの部屋の外の情報を得るのは難しいみたいで映像は鮮明には入ってこなかった。
「ムカつく程頑丈に出来てんじゃねえか。」
部屋の中の力を外に漏らさないように作られた特殊な壁が情報収集にも影響しているんだろう。
一瞬だけ見えた遥夢の表情はやはり不安そうに暗かった。
そんな顔をさせたくて連れてきたんじゃない!
遥夢にはずっと笑っていて欲しいから…。
俺の隣で笑顔でいて欲しいから攫ってきたんだ。
だけど俺の頭に流れる音声は遥夢の話し声、鮮明に聞き取れる遥夢の言葉だった。
「緊張しています。
私が本当にここに受け入れてもらえるのか…
とても不安です。
だけど信じるしかないんですよね。
マツを…
みなさんを…。
それに受け入れてもらえるように私も精一杯努力します。」
頭の中に入ってくる遥夢の声は凛として俺の心に響いた。