only one
窓に視線を向けると、見えるのは碧(あお)。
ゆらゆらと揺れる碧(あお)
「ここは?」
移動してないって聞いたのに窓の外の景色は違って見える。
「さっきの湖は覚えていますか?」
「はい。」
「ここはその湖の中です。」
「?」
「あなたをお招きした部屋は街の楽器屋の空間とは別のものです。」
「わからないわ。」
アルの言葉の意味が全く理解出来ていない私に彼は背中をさする手を止めて私をギュッと抱き締めた。
驚き体を捩る私に、
「私に全てを委ねて下さい。」
甘い声で囁かれる。
「遥夢様が騎士様との永遠を手に入れるための試練の場がここなのです。まずはこの環境に体を馴染ませないと前には進みません。」
囁きは力強い言葉に変わり、アルはその腕の中から私を解放した。
「ここは街ではないのですね?」
試練の場なんて、永遠なんて言われるとやっぱり私はマツと一緒に生きたいという気持ちが先行して気持ちが引き締まる。
「扉を隔てて、別の空間と繋がっているのですよ。この部屋にデリー様が長く留まらなかった理由は、ここがあなた様だけに用意された空間だからなのです。」