only one
私だけの試練。
私だけの空間。
そう思うと急に体が震えだした。
この部屋に入ってから感じなかった冷たい空気を体に感じたんだ。
「そうやって心を少しずつ開いて、ここの環境に慣れていって下さい。」
ブルブルと震える体をまたアルは抱き寄せながら話しかけてきた。
寒い。
痛い。
身を切られるような寒さというものを体に感じながら私はコクコクと頷く事で応えた。
それと同時に試練という言葉が頭の中で響いて、初めて恐怖を感じた。
怖いなんて全く思わなかった心に少しずつ恐怖が広がっていく。
だけどそれが何に対してなのかはわからない。
わからないからこそ心は恐怖に浸食されていくのかもしれない。
「アルさん?」
「アルで結構ですよ。」
「怖いです。」
「私が?」
「違います。恐れるものが何かわからなくて…。だけど怖いんです。」
俯いたまま小さく呟く私の頭をユルユルと撫でながらアルは話をしてくれた。
「無防備すぎるあなた様だから、それもあなた様のための試練。
恐怖心をもっと持って下さい。
疑う事を知って下さい。あなた様は素直過ぎるのですよ。」
「だけど、アルを怖いなんて思いたくないもの。」
それにデリーさんが連れてきたくれた場所に、紹介してくれた人に間違いなんてないって思う。
「甘いのです。」
ピシャリと言い放つアル。
驚き見上げるとアルはとても険しい表情で私を冷たく見下ろしていた。