only one
ディアスに詰め寄り、奴の肩を鷲掴みにしたまま揺さぶる俺に、
「てめぇが今どんなに足掻いても力の制御が出来てねぇんだから遥夢の苦しみを取り除くことなんてできねぇんだよ!」
遥夢を救いたいなら早くてめぇが訓練を終えるしかねぇんだよと吐き捨てるように言葉を落とした。
遥夢はただ俺から離されただけじゃないのか?
俺の訓練が終わるのを待っているだけじゃねぇのかよ!
「遥夢に何をさせた。」
冷静にディアスに尋ねる俺に応えたのデュラン。
「伝説の乙女はその身を守る力をもたなければなりません。」
「あ゛?」
「彼女がもし、あなた以外の男の手に渡るようなことが起きたとしたら……「この世界を壊してでも遥夢を救い出す!」
デュランの言葉を遮るように話す俺にデュランはチラリと俺に視線を向けた後、静かに首を横に振りながら口を開いた。
「あなたを暴走させない為の保険のようなものです。」
「あ゛?」
「つまり、彼女が誰の手にも汚されることのない状況を作らねばならない。」
「そんな事、俺がそばにいて起きるはずがねぇ!」
「絶対とはいきません。」
「絶対だ!」
「相変わらずの自信ですね。」
自信なんかじゃねぇ…――。
「責任だ。」
男として愛する女を守ることは自信なんかじゃねぇ、責任なんだ。
この世界に戻る前からの俺の責任。
遥夢を連れてくる事で、その責任は更に重いものになった。
「責任と言うのならば、この世界を壊させない責任を彼女にも持ってもらわねばなりません。」
「そんなもんいらねぇだろ!」
「試練を越えねば彼女もまた、真の乙女になれないのです。今のあなたのように…。
彼女も、世界崩壊の鍵なのですよ。
崩壊の力は彼女にはない、しかし彼女は引き金を弾くことのできるただ一人の人なのです。」