only one
要は俺がもっと強くなれば遥夢が辛い思いをする事はない、そう言いたいのか?
「乙女の純潔は騎士だけのものでなくてはいけません。
それには彼女にも強さが必要なのです。」
そんなもんいらねぇ…――。
「この試練で彼女の騎士への愛を試されているのです。」
そんなもんいらねぇ…――。
「二人の絆を…「試してんじゃねぇよ!」
結局俺は遥夢に辛い思いをさせてしまっているという現実を受け止めなければならないのか。
遥夢の世界から遥夢を救いたくて連れてきたこの世界でも遥夢は苦しまなければならないのか。
「遥夢にも覚悟があるんだよ!
お前がそれを邪魔してんじゃねぇよ!」
デュランの胸倉を掴む俺の背後から肩を引っ張られディアスは俺をデュランから引き剥がした。
「覚悟ってなんだよ。」
ディアスを睨みつけながら話す俺に、
「お前と生きる覚悟以外に何の覚悟がいるんだ?」
呆れたと言いたげに大袈裟に肩を落としながら言葉を返すディアス。
「俺と生きる為に覚悟なんていらねぇ。
遥夢はただ俺のそばにいればそれでいい。」
「だからてめぇは馬鹿だって言われるんだよ!」
「あ゛?」
「あ゛じゃねぇよ!
馬鹿マツ!!」
「上等じゃねぇか――…。」
ディアスの胸倉を掴む俺を奴はジッと見据えるだけで抵抗をしなかった。
その落ち着き払った態度に俺は一瞬気持ちが怯んだんだ。
「遥夢はお前と一緒にいるために今試練を乗り越えようとしてるんだ。
信じてやれねぇのかよ…。」
お前の為だけに遥夢は頑張ってるのにってあからさまにガッカリとした様子で言葉を掛けるディアスに俺は言葉を失った。