only one
「訓練を再開しましょう。
あなたの頑張りにかかっているのですよ?
早くしなければ彼女はずっと彷徨うことになります。」
静かに語るデュランの声。
「彷徨うとはどういうことだ?
遥夢に何が起きているんだ?」
この世界に遥夢は1人なんだ。
俺が側にいてやらなきゃ1人ぼっちなんだ。
そんな遥夢が彷徨う?
彷徨うっていったいどういうことなんだ?
「伝説の乙女には特別な力が宿るのです。」
静かに話し出すデュラン。
「遥夢は乙女の力を手に入れた。
力を受け入れる資格を持ち合わせていると認められたんだ。」
ディアスはまるで自分のことのように嬉しそうに言葉を落とした。
「彼女は恐らく力を受け取ったのでしょう。
それは苦痛を伴うと聞いています。
マツ様に遥夢様の声が聞こえたのはきっと彼女が苦しみの中であなた様を呼んだからだと…。」
「遥夢は苦しんでいるのか?
苦しみの中で俺を呼んでいるのか?」
だったら今すぐ遥夢の側に行かせろよ!
遥夢をこの腕で抱きしめてやりたい!
遥夢が苦しんでるのに俺は側にいてやれねぇなんて…
「遥夢のいる場所を教えろ!」
ディアスから腕を放して向き合い、俺は吐き捨てるように言葉を放った。
「マツ様、それは出来ません。」
「何?!」
「ですから、遥夢様の側にマツ様を行かせるわけにはいかないのです。」