only one
ギュッと力を込めて抱きしめられてもマツじゃない。
私の欲しいマツのぬくもりじゃない。
「お願いだから放して..やっぱりマツと離れるのはイヤ..」
泣き崩れる私を支えてくれるディアス。
そして彼は私の耳元で小さく囁くように言ったんだ。
「嘘なんだよ。唇から記憶を吸い取るなんて..真っ赤な嘘!!」
「へ??」
気まずそうに視線を泳がせるディアス。
嘘?
どういうこと?
間抜けな声を上げたまま固まる私の前に跪き私の手を取るとディアスは静かに口を開いた。
「悪かったよ。からかっただけなんだ。」
からかったですって?!
走って荒くなっていた呼吸が今度は怒りで更に荒くなる。
ひどいよ。
ひどいよディアス...。
「どういうつもりなの?」