フカキコカゲ
 それでも、大変な所まで来ている、とは思わなかった。むしろ、お気に入りのシャツに穴が開いたことが気になった。道はどんどん藪に消え、一段背が低い草が生えていることだけが、ここが元は遊歩道であったことを示しているだけなのに、「私」は先に進むことをやめなかった。日が暮れるにもまだ早い。「私」の妄想はまだ続いていたのだ。
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