フカキコカゲ
 「私」が山の中腹にある神社の駐車場にたどり着く頃には、アブラゼミの骨太な鳴き声よりもヒグラシの憂いをにじませるささやきが耳につくようになっていた。夕刻と言うのでもなく、陽もさほど傾いてはないものの、夏の終わりという現実の時間を認めさせるにはそれで十分であった。
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