【奏】ミントチョコレート

入口に程近いソファに座り
床を見つめてうなだれている姿…


―……最悪


思わず声に出して呟きそうになり

慌てて口を両手で押さえた。





…来てたんだ


――珍しいな


でも…ここで何してるんだろ?




そう思ったと同時に

気付かなかった振りをして

部屋に戻ろうかと思ったけど…


性格的に放っておくなんて出来なくて駆け寄った。





「大丈夫?

調子悪いの?」



そう問いかけた私に

うなだれていた頭が持ち上がり

少し驚いたと思った表情は

いつもと同じクールな

ポーカーフェイスに戻った。





どうせ〝別に"って言われるんだろうな





…やっぱ

……声かけなきゃ良かったかな






そう思った瞬間




「あぁ…大丈夫」




返事が返って来た事に驚いた。




「そっか…

…岩瀬君は部屋行かないの?」




「あ―…今は…いいや」




素っ気ない返事に

部屋にも入らず
何しに来たんだろう

そう思いつつ

やっぱり関わりたくないって思いが大きくて



「じゃあ
私は戻るね」



そう言って

体を反転させようとした瞬間




「…話があるんだ」



そう言われ立ち止まった。





「…話?」



「あぁ」



「誰?

呼んで来ようか?」



「違う、光石に」



やっぱり名字で呼ばれるのって…


親しくないって証拠だよね…。



って…えっ?



「…わ…たし?」



不思議そうに聞き返すけど

話があるって言った癖に

こっちを見ようともしないから

聞き間違えたのかと思った…。



< 9 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop