孤高の狼に捧ぐ恋唄


「月のところへ行くかい?」



私は驚き、マスターを見やる。



「いいんですか……?」



マスターはゆっくり頷いて、

「その方があるいは月も……」

とまで言いかけてハッと口をつぐんだ。



思慮深いマスターが思わず口にしてしまいそうになるほど、月の容態は切迫しているのだろうか。



そう思うと、私は今にも崩れてしまいそうだった。



でも、月に会いたい。

その一心で踏みとどまる。



「行きます……」



月の元に。

< 137 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop