孤高の狼に捧ぐ恋唄
一瞬だけ微笑んだような顔になり、月はまた目を閉じた。
一瞬だけ、意識を取り戻した月。
嫌だよ。
そんな、命の最後の煌めきみたいな仕草なんてしないでよ。
目を開けてよ。
はっきり言ってよ。
「良くないよ……
ちっとも良くないよ……
こんなのって……
こんなのってないよ」
月を連れていかないで。
私は『月』と書いてユエと読むことが、スマートに感じたことを後悔した。
今は『月』という名前がとても嫌だった。
空へと浮かび上がりそうな気がして。
夜空にぽつんと孤高に浮かぶ、あの月のように。