孤高の狼に捧ぐ恋唄


「ごめんね、遅くなって」



マスターも月を仰ぎ見ながらそう言った。



「そんな……私の方こそ……」



私が言葉を続けようとしたときに、マスターは私を見て言った。



「明日香ちゃん」



どちらともなく立ち止まる。



マスターは少し悲しそうな顔で言った。



「実はさっき、警察に行って来たんだ」



不意に風が私とマスターの間を駆け抜けていった。


< 172 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop