孤高の狼に捧ぐ恋唄
マスターは
「風が出てきたね」
と言って、
「体に障るといけないから、病院へ戻ろう」
と私の手を引き言った。
私は引かれるまま、ついていく。
病院に入ったところで履き物を履き替えようとして、スリッパだったことに気付く。
マスターは気付いてない様子で、それがいつものマスターからは考えられないことで、なんだか先の話を訊くのが不安になる。
廊下を歩いていると、看護師に声を掛けられた。
「そろそろ面会時間も終わりですよ」
事情を説明するのが億劫だったのか、マスターは曖昧に頷き、私の病室へ向かった。