孤高の狼に捧ぐ恋唄
私は、マスターに視線を合わせた。
誰かに背中を押してもらいたかったのかもしれない。
「私、月のそばにいてもいいんですか……?」
マスターが小さくホッと息をして、頷いた。
そして、つぅ、と一筋の涙を流した。
その涙はとても純粋で、透明な涙だと思った。
「ありがとう、明日香ちゃん」
そう言ったマスターに、私は涙が止まらなかった。
「マスター……」
ありがとう。
本当にありがとう、マスター。
声にならない言葉を、胸の中で何度も重ねた。