孤高の狼に捧ぐ恋唄


振り返ると、せせら笑うように、月が立っていた。



違う。



ガツッ……ガツッ……



音は月の足元から聞こえていた。

立っていたのではなく、亜龍を蹴り上げながら、月は……

泣いていた。



「……やめて」



私の声は月をすり抜け、霧散していく。



私は思い余って、月にしがみついた。



「やめてッ……」



月の動きが止まった。


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