孤高の狼に捧ぐ恋唄
私は月の隣に腰掛け、出来るだけ穏やかな声で言った。
「謝ることないよ……」
月はそんな私の声が聞こえたのか聞こえないのか、両手を握り締めながら言った。
「アイツを見て、明日香が血だらけになって倒れたのを思い出したんだ。
守れなかった不甲斐ない自分も」
そして月は、私を真正面から見据え、言った。
「もうあんな目に合わせたりしない。
だから……
チャンスをくれないか……?」
チャンス?
私は怪訝な顔をしたに違いない。
月は私の手にそっと触れた。
「俺に明日香を守らせてくれ」
今度こそ、そう言った月の目に迷いはなくて。