孤高の狼に捧ぐ恋唄


亜龍の心の隅にあったそれが、月に謝罪されたことで、

少しずつじわじわと亜龍の心に広がっているであろうことは、私にもわかった気がした。



復讐は何も生み出さない。


自分が惨めになるだけ。


羽生さんの言葉が、私の胸に蘇った。



月はベッドにうずくまる亜龍から視線を外し、病室を出た。



私も後を追い、病室を出る間際、亜龍が小さく呟いたのが聞こえた。



「……悪かった」



その言葉は、私に向けたものなのか、それとも……



振り返った私には、亜龍の言葉はもう何も聞こえてこなかった。


< 203 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop