孤高の狼に捧ぐ恋唄
亜龍の心の隅にあったそれが、月に謝罪されたことで、
少しずつじわじわと亜龍の心に広がっているであろうことは、私にもわかった気がした。
復讐は何も生み出さない。
自分が惨めになるだけ。
羽生さんの言葉が、私の胸に蘇った。
月はベッドにうずくまる亜龍から視線を外し、病室を出た。
私も後を追い、病室を出る間際、亜龍が小さく呟いたのが聞こえた。
「……悪かった」
その言葉は、私に向けたものなのか、それとも……
振り返った私には、亜龍の言葉はもう何も聞こえてこなかった。