孤高の狼に捧ぐ恋唄
身振りで、家の中に入るよう、母を追いやる。
母はハイハイ、というようにちょっと肩をすくめ、家の中へ入っていった。
「もしもし」
私が声を出すと、ガヤガヤとした雑音の中、声がした。
『もしもし……
明日香ちゃん……?』
低く、がさがさとした声だったが、それはマスターの声だった。
月の携帯は、マスターが支払っている。
だけど、今まで一度たりとも使ったことがないというのに……
『落ち着いて聞いてくれるかな』
その言葉に、私はイヤな予感がした……