孤高の狼に捧ぐ恋唄
ひょこひょこと危なっかしい足取りで月の元へいくと、両手を合わせてお礼を言っていた。
そして私を振り返り、
「あすかって、お姉ちゃん?」
と言った女の子に、私は驚きながらも頷いた。
「みきをね、助けてくれたとき、お兄ちゃんがずっと『あすか』って呼んでたの。
それで、最後に
『出会えてよかった』って言っていたんだ。
お母さんに言ったら、教えてあげたいねって言ってた!」
たどたどしくも一生懸命伝えようとする女の子に、私は泣きながら微笑んだ。
「教えてくれて、ありがとう」
女の子が照れくさそうに笑うと、ちょうどドアが開いて、母親らしき人が入ってきた。
「みき、いきなり居なくなったらビックリするでしょ」
母親は女の子にそう言って、マスターと私に頭を下げ、女の子の手をひいた。
女の子は『バイバイ』と手を振りながら、母親と二人で霊安室を出て行った。