孤高の狼に捧ぐ恋唄
「その事件を担当したのはおれだ。
それにアイツもあの容姿だろ?
だから今でもよく覚えている」
羽生さんは、グビリ、とコーヒーで喉を湿らせた。
「当時アイツは中学生で、三つ違いの妹がいた。
母親は……あんまり身持ちが良くない女で、誰が父親かはわからなかった。
アイツと妹の父親も違うやつだ。
母子家庭とは名ばかりで、2人は母方の祖母に預けられて育ったらしい。
その祖母も今はもう、病気で亡くなっている」